音楽、サーフィン、写真、料理。
カメラで奏でるアドリブは、「仕事は遊び、遊びが仕事」。

商業撮影スタジオ撮影人物撮影動画撮影

フォトグラファー

井村 義次Yoshitsugu Imura

井村 義次Yoshitsugu Imura

三重県鳥羽市出身。高校生時代からサーフィンに夢中になり、サーフィン雑誌に掲載されるような写真を撮るカメラマンをめざし地元写真館に弟子入り。同時に中学生の頃に始めたギターで音楽活動も開始。その後、印刷会社に転職し、撮影技能士として17年間従事したのち独立。カメラマンとしてはトータルで38年のキャリアを数える。フリーカメラマンとして独立から程なく、ロジセンスのクリエイティブメンバーの募集を目にし、チームに加わり現在に至る。調理師免許を有し、料理写真も高い評価を得ている。

すべての波を追いかけるのではなく、狙ったグッドウエーブに乗る。

現在の主な仕事内容やミッションを教えてください。

井村:プロとして撮影を行う人です。呼び名は何でもいいのですが、自分では、商業的な被写体として風景や人物を撮るときは「フォトグラファー」、動画を撮るときは「カメラマン」、自分の作品に関係すると「写真家」と自然に使い分けている気がします。ロジセンスの仕事では、圧倒的に人物を撮影することが多いですね。

経営は人が行うものですし、そこに発生するさまざまな問題も人が生み出すもの、そしてそれを最終的に解決するのも人です。ロジセンスは企業に対して経営コンサルティングを行う会社ですが、経営者はもちろん、そこにいる人たちを理解することに、とことんこだわります。そして、そこにいる人たちの言葉に体温や感情を乗せて世の中に伝えるため、ウェブサイトやパンフレットなどメディアへの写真や動画の掲載を提案することがとても多いというのが特徴です。そんなロジセンスにおける私の最大の使命は、被写体の内面を写し出し、その人の言葉に説得力を持たせることだと理解しています。コンサルタントがインタビューで聞き出す言葉と、フォトグラファーである私がファインダーを覗きながら聞き出す言葉は、時に違う温度で発せられます。レンズを通すことでその人らしさが解放される、そんなことも少なくありません。そういう意味で、私にしかできない役割を果たそうと思っています。

ロジセンスとは、いつどのようにして出会ったのでしょうか。

井村:出会いは7年くらい前のことになるでしょうか。フリーランスとして独立して3年が過ぎた頃に、ロジセンスが制作物などのアウトプットに本格的に力を入れるためクリエイティブチームをつくるという、スペシャリスト募集告知を目にしました。たまたまオフィスが自宅から車で5分という近距離でした。これをサーフィンに例えると、「目の前に来たグッドウエーブ」でした。当然すぐにアプローチしました。

実際に中井さんに会って話をすると、これが目の前に来た大波だということがすぐにわかりました。これまで関わってきたクライアントやプロダクションとは違うビジョンを持ち、それを一緒に実現することを想像した時の気持ちの高まりが初めてのものだったのです。自分の経験と技術と個性でこのグッドウエーブに乗りたいと強く思ったことを覚えています。そして今、それが間違いではなかったと、自信を持って言えます。

写真のための苦労ならどんなことでも、いつまでもできると思った。

これまでの経歴について、詳しく教えてください。

井村:高校時代は、地元がサーフィンの有名なポイントに近いこともあり、サーフィン技術の向上に熱中していました。高校卒業後も、サーフィンの魅力に取りつかれたまま、とは言えすぐにプロサーファーになれる訳もなかったのですが、ふとした時にサーフィン雑誌に掲載されている写真を見て圧倒されたのです。それまではカメラに関しては「オタク」の趣味だと敬遠していましたが(笑)、自分でもこのサーフィン雑誌のように写真でこの魅力を表現したいと思い、すぐに知り合いにカメラを借りて海へ。当時はフィルムだったので、現像されたものを見るまでどう写っているか分かりません。期待して目にしたプリントは、1枚残らず真っ黒でした。ここで心に火がつき、当時地元では名の知れた写真館に弟子入りをしました。

そこで20代を過ごすことになるのですが、続けられた理由は「写真は自分の天職で写真のためなら苦労できる」と思えたからです。乗り越えた先の自分、フリーカメラマンとして成功している自分が想像できました。30歳の頃、少し他の道を考えたこともありましたが、結局はカメラを手放した事はありません。そして印刷会社の撮影技能士としてさらに17年を過ごし、独立して今はトータル38年のキャリアに至るという感じです。

カメラ以外の他の道を考えたことがあるのですね。

井村:そうですね。高校生の頃プロサーファーを夢見たのは笑い話ですが、唯一、30歳の頃に音楽で他の道を考えたことがあります。中学校の頃にギターを始めたのですが、今でもミュージシャン活動をしているほど、音楽が大好きでした。演奏するだけでなく曲をつくってもいたので、それがどこまで通用するのかチャレンジしたいと思っていました。好きになったことは、しつこくとことん突き詰めるタイプなんですよね。プロの音楽家として成功するのは難しいと思い知りましたが、音楽と関わり続ける事が幸せだと言う事に気付かされました。

その瞬間の閃きが個性になり、個性がプロとしての存在価値をつくる。

井村さんがプロとして不可欠だと思うのは、どのようなことですか。

井村:ギターもサーフィンもカメラも、その瞬間ごとのインスピレーションとそれを表現するアドリブの力が必要です。料理においても同じことが言えると思います。閃きのような感覚に絶対的な自信がないとプロにはなれないのだと、私は理解しています。この閃きの感覚をもう少し紐解くと、「遊びの面を持って楽しくトキメク感覚」と言ったところでしょうか。音楽にはセオリーがあり料理にはレシピがありますし、サーフィンにも基本的なテクニックがありますが、どれもそれを忠実になぞるだけでは他と違った驚きや喜びを生み出すことはできません。「好き」と「できる」には、大きな隔たりがあるのです。特にクリエイティブな領域では、圧倒的な個性が必要です。私にとっては、それが写真を撮るということでした。カメラを持った時に、最も大きな閃きを具現化する事ができたから、今この場所にいます。

カメラマンとしてのスキルはどのようにして身につけてこられましたか。

井村:もちろん、最初に弟子入りした写真館では撮影の基礎や細かな暗室作業などを教えていただきました。また印刷会社では、撮影した写真を見てもらいたい状態で掲載されるための、画角や色味などメディアとのマッチングについて多くのことを学ぶことができました。それ以外には、例えばカメラマンを目指したそもそものきっかけであるサーフィンの写真が上手くなるために、地元のプロサーファーが有名メディアから取材を受ける時にそこに呼んでもらい、プロの撮影チームの取材現場を間近で見ることで学んだりもしました。一流のサーファーが多い地域なので、必然的に一流のカメラマンも全国からやってきます。そこで仕事現場に直接聞きに行ったり、同じセッティングで撮った自分の写真と実際に雑誌に掲載された写真を見比べて違いを分析したりして、「アドリブ」という要素はここで鍛えられましたね。

「上手に撮る」以上のことを身につけたカメラマンが増えてほしい。

井村さんが求められる存在である大きな要因はどこにあると思いますか。

井村:先ほどから言及しているアドリブ力だと思うのですが、それをどのような目的で発揮するのかを理解していることだと思います。ビジネス案件においては、私は芸術家ではなくあくまでも商業カメラマンです。そこには、クライアントの意向、ディレクターの意図、被写体の人柄があります。私は撮影現場においてその全てを理解し、表出させなければなりません。だからこそ、機材のセッティングやシチュエーション作りには特別にこだわりますし、それ以上に現場にいる人たち、特に被写体とのコミュニケーションにこだわります。そう、その場限りのセッションを盛り上げ、予期せぬアドリブを生み出すためには労を厭わない、そんな姿勢を評価していただけているのかな、と思っています。

余談ではありますが、政治家の方からの撮影依頼も昔からとても多いんですよ。どうやら「井村にとってもらったら必ず当選する」というジンクスがあるらしいです(笑)。これはとても嬉しいことで、やはりその人とのコミュニケーションを通して内面を表情に呼び出すことができているということの証であると思っています。スーツの柄や手のポーズなどの小細工だけでは表現できないところにこそ、私の介在価値があると信じていますし、それが求める結果につながるというのはカメラマン冥利に尽きます。

もちろん、被写体が人間ではない時も、考え方は同じです。例えば料理撮影ですが依頼主さんとはたくさん話します。この料理を食べるのはどんな人ですか。これは朝食ですか、夕食ですか、その時間は何時ごろですか。仲間と食べるのですか、家族で食べるのですか。それぞれの答えによって、細かくライティングを変えたり添える小物を指定したり、できることはいくらでもあります。

カメラマンとして、これからどんな存在でいたいと思いますか。

井村:まずは元気な身体を維持することが大事だと思っています。フィットネスに通うことも考えたのですが、いやいやそれなら全身運動であるサーフィンをした方がいいよね、ということで、ここのところ海にいる時間が増えました。また、年齢的な観点で言うと、後継者を探したり育てたりすることも使命なのではないかと思うようになりました。ハードもソフトもどんどん進化し、誰でも上手に写真が撮れる時代にはなっています。だからこそ、ヒューマンスキルを伴ったプロのカメラマンはこれからも求められ続ける存在なのに、なかなか育っていないという現実があります。「上手に撮る」以上のことを身につけたカメラマンを、一人でも多く輩出したいですね。

ロジセンスの一員としては、クライアントの元に安心して一人で行かせられるカメラマンとして、これからも信頼され期待される存在でいたいと思っています。ただ人当たりがいいというわけではなく、その日の撮影の目的を理解してそれを正確に伝えることができ、撮影現場でクライアントとの信頼関係をさらに強化することができるからこそ、コンサルタントやディレクターが同席する必要がないと判断できる。そんなカメラマンだと思われていることが嬉しいですし、その強みをもっと発揮できる場を増やしたいと思っています。そしてクライアントから「また井村さんに撮ってほしい」と言っていただけることを増やしていきたいですね。

インタビュー:中井 博文 (LOGISENSE Inc.)
記事執筆:竹中 圭一 (LOGISENSE Inc.)
撮影:井村 義次 (LOGISENSE Inc.)

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